🧠 あなたの脳、同じ景色に飽きていませんか?
「会社への通勤ルート、いつも同じ」
「スーパーへ行くのも、駅までの道も、だいたい同じ」
…そんなふうに、“無意識で歩いている道”ってありますよね。
でもちょっと待ってください。
実はこの「同じ道ばかり」という行動、脳の働きを偏らせるかもしれません。
私たちの脳は「ルーティン」に慣れれば慣れるほど、省エネモードに入り、“刺激を受け取らなくなる”傾向があるんです。
🚶♀️“いつも通り”の行動で、脳は楽をし始める
脳には「効率化」のしくみがあります。
繰り返される作業やルートに対しては、脳は“もう覚えてる”と判断し、細かい注意や感情の動きを減らしていきます。
たとえば、
- 通勤ルートで「今日は道端に花が咲いていた」と気づくこと
- スーパーで「新しい看板が出ていた」と記憶すること
これらはすべて、脳が“新しい情報”として処理しているからこそ起きる反応です。
でも、毎日同じ景色ばかり見ていると、
脳は「この道はもう確認済み」として刺激をシャットアウトするようになります。
🧩 脳の“可塑性”が失われていく!?
脳は本来、“可塑性(かそせい)”と呼ばれる柔軟性を持っています。
🔍 可塑性とは?
神経細胞がつながりを変えたり、再構築する能力のこと。
新しいことを覚えたり、忘れたりする“変化する力”。
でも、同じ行動ばかりが続くとこの可塑性が低下するという研究も報告されています。
特に前頭前野や海馬といった「記憶」や「判断力」「注意力」に関わる部分は、新しい刺激を受けることで活性化します。
つまり、
- 毎日同じルート
- 毎日同じ手順
- 毎日同じ風景
これらは、脳を固定化し、“使わない回路”が衰えていくリスクを高めるのです。
🧠 “認知症予防”の視点からも要注意
実は、高齢者の認知機能維持や認知症予防の研究においても、
「同じ道を繰り返す生活はリスクになる」とされています。
- 認知症予防プログラムでは「新しい道を歩く」「迷子になりそうな場所にあえて行く」などが含まれることも。
- 空間認識・判断力・記憶力を総動員する“地図を持たずに歩く”体験は、認知機能を刺激すると言われています。
🚨 脳は「使わない機能」から衰える。
特にルート選択・方向感覚・空間処理は、意識しないと鍛えられません。
💡 では、どうすれば脳を刺激できる?
🔁 1. “逆ルート”を歩いてみる
たとえば通勤・通学ルートを、帰り道だけ逆に歩く。
それだけで「右折・左折のタイミング」や「見える景色」がまったく変わり、脳の働きも切り替わります。
🛣 2. ちょっとだけ道を変える
1本となりの道を使ってみる
→ 意外な発見あり(お店・景色・人の流れ)
信号が多い道にしてみる
→ 判断力やタイミングを見る力が必要になる
坂道や階段がある道へ変更
→ 身体的にも脳的にも負荷が上がる
📸 3. 新しい道で“気づきメモ”を作る
「変えた道で、どんな新しい発見があったか?」
をスマホや紙に書いておくと、記憶の定着+行動強化にもつながります。
💬 実際の声:患者さんとの会話より
私が以前担当した脳卒中後のリハビリ患者さんに、「今日は病院までの道をちょっと遠回りしてみたんですよ」と教えてくださった方がいました。
その方いわく、
「いつもより疲れたけど、いろんなことに気づけて気持ちが元気になりました。」
歩行能力だけでなく、“脳の活性”にも効果があったのだと思います。
🧠 脳だけじゃない、カラダにも効く
新しい道を歩くことは、脳の活性化だけではなく身体機能へのリハビリ効果もあります。
✔️ 不安定な道ではバランス能力が求められる
→ 中殿筋や体幹の筋肉を自然に使う
✔️ 下り坂や段差では“足首〜ヒザ”の調整力UP
→ 歩行機能・足の安定性向上
✔️ 信号・人混み・横断歩道=“状況判断”のトレーニング
→ 注意力と運動の連動(デュアルタスク)
☝️ リハビリ視点で見る「日常の脳刺激」
行動 | 脳への刺激 |
---|---|
いつもと違う道を歩く | 空間認識・記憶力 |
坂道や階段を選ぶ | 運動調整・判断力 |
音楽を変える | 聴覚刺激・感情反応 |
利き手じゃない手で荷物を持つ | 運動学習・感覚統合 |
知らないお店に入る | 判断力・選択力 |
✅ まとめ:ちょっと変えるだけで、脳は元気になる
脳は“いつも通り”が続くと、どんどん省エネ化して、働きを弱めてしまいます。
でも、
- 「いつもと違うルートで」
- 「ほんの少し寄り道を」
- 「“初めて”を探して歩く」
この3つを意識するだけで、脳は「おっ!?」と目を覚まします。
🔚 ときどき、リハを始めてみませんか?
参考文献
- 厚生労働省. 認知症施策推進大綱
- 前田正信. “脳を活性化させる生活習慣とは”. 脳神経リハビリテーション学, 2018; 35(2): 123-130.
- Richard E. Nisbett et al. (2001). “Culture and Systems of Thought: Holistic vs. Analytic Cognition”. Psychological Review, 108(2), 291–310.
- 西川盛利.『脳が若返る生活習慣』PHP研究所, 2020年.
コメント