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ワイドベース歩行とは?
ワイドベース歩行とは、歩くときに足幅が通常より広くなる歩き方を指します。これは特に以下のような人に多く見られます。
- 高齢者
- バランス機能の低下している人
- 小脳や前庭など、姿勢制御に関わる神経系の疾患を持つ人
本来の目的は「安定」を保つことですが、無意識に“足を広げることでバランスを取っている”**とも言えます。
なぜ内転筋が働きにくくなるのか?

内転筋(内ももの筋肉)は、以下のような役割があります。
主な筋肉 | 大内転筋・長内転筋・短内転筋・薄筋・恥骨筋 |
---|---|
主な作用 | 股関節の内転(脚を閉じる) |
補助動作 | 股関節の屈曲・伸展、膝の屈曲など |
でも、足幅が広くなるとどうなるか👇
- 股関節の「内転モーメント(閉じる力)」が減る
- 足を閉じる動きが少なくなり
- 内転筋の出番が少なくなる
つまり、ワイドベース歩行=内転筋の活動量が減りやすい歩行パターンなのです。
バランスを取っているのは、どの筋肉?
内転筋の出番が減ることで、代わりに以下の筋肉たちがフル稼働することに👇
筋肉 | 役割 |
---|---|
中殿筋(外転筋) | 骨盤の横揺れ防止、片脚立ちの安定化 |
体幹筋(腹斜筋・多裂筋など) | 姿勢保持、歩行中の重心コントロール |
このように、ワイドベース歩行は「体幹+外転筋」頼りの歩行になりやすく、結果として疲れやすい・効率が悪い・転びやすいという課題を抱えることもあります。
内転筋の重要性を再確認
内転筋は「脚を閉じるだけの筋肉」と思われがちですが、実はもっと多くの役割を果たしています。
🔍 内転筋の主な機能
- 歩行中の骨盤の安定化
- 片脚立ち時の左右バランス調整
- 階段昇降や立ち座りのサポート
- 転倒予防に直結する筋肉
弱くなるとどうなる?
- 骨盤が左右にグラつく
- 歩き方が「がに股」や「内股」になりやすい
- 膝や腰への負担が増える
- 疲れやすく、転倒リスクが上がる
どうする?内転筋のチェックと強化
✅ チェックしてみよう
- 脚を閉じたまま片脚立ちできますか?
- 内ももに力が入りづらくなっていませんか?
- 歩いているときにガニ股になっていませんか?
🏋️♀️ 内転筋を使う&鍛える習慣
方法 | 内容 |
---|---|
膝にクッションを挟んでスクワット | 内転筋が意識しやすく初心者に◎ |
横向きで脚を内側に動かす運動 | 骨盤を安定させる感覚も養える |
歩行時に「脚を閉じる意識」 | 普段の歩き方を見直すだけでも効果大 |
リハビリ・臨床での視点
現場でワイドベース歩行を見かけたら、こんなことを考えてみてください。
- 内転筋の筋力は?
- 股関節の可動域や協調性は?
- 体幹・外転筋への過剰依存がないか?
- 歩行訓練に内転筋の意識を加えられないか?
→ 安定性の再獲得には「内転筋の再教育」がカギになることも少なくありません。
📝 まとめ
観点 | 要点まとめ |
---|---|
✅ 歩行タイプ | ワイドベース歩行=足を広げてバランスを取る |
🦵 内転筋の役割 | 股関節の内転・骨盤安定・歩行時の左右バランス調整 |
⚠️ ワイドベースとの関係 | 足を閉じる動きが減り、内転筋が使われにくい |
💪 強化の意義 | 歩行効率UP・転倒予防・股関節/膝の負担軽減 |
🔚 ときどき、リハを始めてみませんか?
参考文献
- Schinkel-Ivy, A., et al. (2015). “Balance control strategies during gait in individuals with bilateral vestibular loss.” Gait & Posture, 41(3), 782–787.
- Neumann, D. A. (2016). Kinesiology of the Musculoskeletal System (3rd ed.). Elsevier.
- Yoshida, H., et al. (2007). “Association between adductor muscle strength and functional mobility in elderly people.” Geriatrics & Gerontology International, 7(4), 323–328.
- 内転筋群の役割と歩行との関連. 理学療法ジャーナル 53巻6号, 医学書院, 2019.
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