
「最近、肩こりが取れないなぁ…」
「なんとなく片方の肩だけ重だるい…」
そんな不調、実は“カバン”が原因かもしれません。
普段なにげなく持っているカバン。
でもその「持ち方」や「種類」が、あなたの姿勢や体にじわじわ影響していること、ご存知ですか?
理学療法士としてたくさんの人の姿勢を見てきた私が、今回は
リュック・ショルダー・ナップサックなど、身近なカバンと姿勢の関係について解説します。
バッグの持ち方で姿勢は変わる?
体にかかる負荷は、「どこに」「どんな形で」荷重が加わるかによって大きく変わります。
カバンを持つ位置や重さのバランスが偏ると、私たちの体は無意識のうちにそれを補おうとして、姿勢を崩します。
たとえば…
- 片方の肩だけに荷重がかかると、肩の高さが左右でズレる
- 重たいバッグを下の方で背負うと、体が前かがみになってバランスを取ろうとする
- 薄いストラップのバッグは、筋肉や神経を圧迫して痛みやこりの原因に
では、カバンの種類別に、具体的に体への影響を見てみましょう。
ショルダーバッグ(肩掛け)
▶片側荷重の“クセ”が姿勢をゆがませる
ショルダーバッグは片方の肩に掛けるため、体の左右のバランスが崩れやすいバッグです。
特に同じ肩にばかり掛けていると、肩甲骨まわりの筋肉が緊張し、肩こりや首の痛みの原因にもなります。
よくある体の反応:
- カバン側の肩が上がる
- 逆側の腰が下がる(バランスを取るため)
- 首が傾く・頭痛が出る
▶「斜めがけ」ならマシになる?
多少マシにはなります。体幹に密着することで安定感が出ますが、重心の偏りはゼロではありません。
また、体の前面にバッグがくるようなスタイル(ボディバッグ)も、背中の筋肉バランスを崩す原因になります。
ナップサック(巾着型のリュック)
▶軽そうに見えて、実は体に負担?
ナップサックは薄くて軽い印象ですが、ストラップが細いぶん、肩への圧力が集中しやすいという欠点があります。
荷物が多いときや長時間使用すると、肩こりや背中の張りを起こすことも。
また、形状的に体にフィットしにくいため、バッグが背中で揺れ動きやすく、無意識に姿勢を調整してしまうこともあります。
体に起こる変化:
- 背中が丸まる
- 肩が内側に入る(巻き肩)
- 骨盤が後傾して、全体的に「だらん」とした姿勢に
リュックサック(両肩掛け)
▶“正しく”使えば最も理想的
両肩で均等に重さを分散できるリュックは、体への負担が少ない優等生です。
しかし、「正しく」使うことが前提です。
NGな背負い方あるある:
- ストラップが長すぎて、リュックが腰まで垂れ下がっている
- ベルトが緩く、背中でリュックが揺れている
- 片側の肩だけに掛けている
これらの背負い方では重心が後方にズレ、バランスを取るために上半身が前傾し、ストレートネックや猫背になりやすくなります。
▶理学療法士的“理想の背負い方”
- ストラップは短めに調整し、背中の上部にリュックがくるように
- 背面が硬め・フィットする構造のものを選ぶ
- 胸ストラップやウエストベルト付きのリュックがおすすめ
【姿勢セルフチェック】あなたのカバン、体をゆがめてない?
以下の項目、いくつ当てはまりますか?
- バッグを片方の肩にばかり掛けている
- リュックのストラップが緩くてだらんとしている
- バッグを持って歩くとき、カラダが左右に傾いている気がする
- 最近、肩こり・首のハリ・腰の重だるさが続いている
- 背中が丸まっていると人に言われる
3つ以上当てはまる場合は、カバンの持ち方に要注意です!
バッグ選びで「いい姿勢」は作れる
カバンは「持ち運び」のための道具ですが、同時に“姿勢を作る道具”でもあります。
正しく選び、正しく使えば、姿勢をサポートし、日常生活の不調も防げます。
種類 | 姿勢への影響 | 選び方のポイント |
---|---|---|
ショルダー | 片側の筋肉に負荷 | できるだけ両肩を使う/交互に持つ |
ナップサック | 肩・背中の負担増 | ストラップが太め/軽量荷物/長時間は避ける |
リュック | 正しく使えば◎ | 背中にフィット/高い位置で背負う/左右均等 |
まとめ:カバンを変えれば、体が変わる
毎日の「カバン」をちょっと見直すだけで、姿勢が整い、肩こりや腰痛の予防にもつながります。
✔リュックはしっかりフィットさせて
✔ショルダーは片方ばかりに負荷をかけない
✔ナップサックは軽量&短時間で使うように
毎日一緒にいるカバンこそ、体の一部。
あなたの姿勢づくりの相棒として、上手につきあっていきましょう!
参考文献
- 鈴木健太郎, 久保田尚, 小笠原正幸. 背負いかたの違いによる姿勢と筋活動への影響. 理学療法科学. 2011;26(3):413–417. https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/26/3/26_413/_article/-char/ja/
- 高橋亜弓, 他. リュックサック背負い時の荷重変化と姿勢への影響. 日本生体医工学会誌. 2006;44(Supplement):260. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmbe/44/Supplement/44_Supplement_260/_article/-char/ja/
- 森田菜摘, 田中浩和. カバンの種類の違いが肩の高さや骨盤の傾きに与える影響. 広島国際大学保健医療学部紀要. 2021;11:17-21. https://www.hirokoku-u.ac.jp/assets/files/research/bulletin/hoken/2021_03.pdf
- 辻岡知子. 学童用ランドセルの重量と身体への影響に関する文献的考察. 大阪教育大学紀要 第Ⅰ部門. 2016;65(1):81-87. https://ci.nii.ac.jp/naid/120005702705/
- 厚生労働省. 職場における腰痛予防対策指針. 改訂版, 2013年. https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc3205&dataType=1&pageNo=1
コメント