「あの人、なんでこんなに腹立つんやろ…」
仕事場でも、SNSでも、家族でも。「嫌いじゃないけど、合わへん…」「顔見るだけでモヤモヤする…」そんな“人間関係のストレス”に心が疲れていませんか?
でもちょっと待って。
そのイライラ、“あなたの心が弱いから”じゃありません。
むしろ、ちゃんと「体」がSOSを出してるんです。
理学療法士として働く中で、私は何度も見てきました。
「心の疲れ」が「体の痛み」になって現れている人たちを。
今日は、“イライラ”に振り回されないための心と体の整え方を、最新の神経理論とともにお伝えします。
イライラは、「防御反応」だった。
「ちょっとした一言が、どうしても引っかかる」
「相手の態度にモヤモヤするけど、何も言えない」
こんなとき、私たちの体の中では“戦う or 逃げる”モードが発動しています。
これはポリヴェーガル理論という、アメリカの神経科学者スティーブン・ポージェス博士が提唱した新しい自律神経理論によって説明できます。
この理論では、自律神経は「交感神経」「副交感神経(腹側・背側)」の3つに分かれており、
人と関わるときにはまず「腹側迷走神経」が働いて、安全・安心を感じられる状態を保とうとします。
でも、相手の言葉や表情、過去の経験からくる“トリガー”が刺激されると、体は一気に交感神経優位=「警戒モード」に。
つまり、「イライラする」という感情は、“心を守るための警報反応”だったんです。
◆私もイライラに飲み込まれそうになることがある
実は私自身も、理学療法士として診療している中で「理不尽に怒られる」ことがあります。
たとえば、
「今日はやりたくない」とリハビリを拒否される患者さん。
でも、その方にとって今の時期に動かさないと後遺症が残るということも、私たちには見えている。
だから、ある程度の拒否を押し切ってでも介入しなければいけないことがあります。
でも、その一瞬一瞬で感じるんです。
「なんで怒られなあかんの?」
「あなたに必要なことなのに。。。」
って。
そんなとき、心の中は“イライラ”に支配されそうになります。
◆でも、私はこうして自分を守っています
そんな時に大切にしているのが、「体から整える」という考え方です。
私自身、
- 一度廊下に出て深呼吸する
- 手をギュッと握って、パッと力を抜く
- 「自分の役割は“嫌われ役”になることもある」と言い聞かせる
そんなふうに、感情に飲まれない“小さな習慣”を積み重ねることで、
その後の自分の言葉・態度・選択が、ほんの少し優しくなれる気がするんです。
そして、何より忘れたくないのが、
「自分のイライラに気づいてあげること」=自分を大切にすることだということ。
イライラする相手は、「トリガー」を押してくる人
「なんでこの人にだけ、毎回ムカつくんやろ?」
実はそれ、“過去の記憶”が関係しているかもしれません。
たとえば、
昔怒られてばかりいた上司に似ている口調。
自分を否定されたように感じる言葉の選び方。
自分が我慢していることを堂々とやっている人。
私たちは無意識のうちに、こうした「過去の痛み」に触れる相手に対して、防御モードになってしまいます。
でも安心してください。
その反応は、あなたが悪いんじゃなくて“体の習慣”なんです。
「この人=私の神経を刺激してくる存在」とラベルづけするだけで、少し冷静になれることもあります。
心を守る“距離感”の作り方
① 即レスをやめる
LINEやメール、すぐに返さなきゃ!と思ってしまう人ほど、ストレスを感じやすい傾向があります。
一度スマホを置いて、深呼吸3回だけしてから返信してみましょう。
② 話す頻度を減らす
相手のことを「避けてる」と感じると罪悪感が湧くかもしれません。
でも、「自分のペースで関わる」は自分を守るために必要な選択です。
③ 相手ではなく“自分の感情”に注目する
「〇〇さんがムカつく!」ではなく
「〇〇さんの言葉を聞いて、私は悲しくなった」
と主語を自分に変えることで、心の負担が軽くなります。
理学療法士おすすめ!“体から整える”ストレス対処法
深呼吸のゴールデンルール
→ 吸う:4秒 / 吐く:6秒
ゆっくり吐くことで、副交感神経(リラックス神経)が働きます。
筋弛緩法(きんしかんほう)
→ 手をギュッと握って → パッと開放!
→ 肩をグーッとすくめて → ストンと落とす
一度筋肉を緊張させてから脱力することで、神経の緊張もほどけていきます。
リズム運動
ウォーキング・軽いスクワット・首回しなど、“一定のリズム”がある動きは、脳内にセロトニンを分泌させ、気分を安定させてくれます。
手で心を整える。“セルフタッチ”のチカラ
体にやさしく触れることで、副交感神経が刺激され、安心感が増します。
これは赤ちゃんが泣いたときに抱きしめられると泣き止むのと同じ原理。
- 胸に手を当てて「大丈夫」と声をかける
- 両手をすり合わせて温める
- 手のひらで首筋を包むように触れる
自分で自分を落ち着ける方法を持っていると、外のストレスに振り回されにくくなります。
書くだけで脳がスッキリ。「言語化」のすすめ
「イライラ」をそのまま書き出す。
紙でもスマホでもOK。
誰にも見せないつもりで、感情を正直に出していいんです。
コツは、「何が一番イヤだった?」を自分に聞くこと。
書いていくと、自分の感情が「怒り」ではなく
「悲しさ」「寂しさ」「不安」などに変わっていることに気づくかもしれません。
最後に一言、「今日もよくがんばったね」
それだけで、自律神経はゆるんでいきます。
“いい人”をやめたら、呼吸が深くなった
無理して笑う、相手に合わせて気を遣う、傷ついても我慢する…
“いい人”でいようとすればするほど、自律神経はすり減っていきます。
そして、「自分を守る力」も弱っていく。
本当に優しい人は、自分を大切にするからこそ、人にも優しくできるんです。
「それはできません」「それは嫌です」と言える練習をしてみましょう。
最初は勇気がいるかもしれません。
でも、不思議と体がラクになります。
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まとめ:イライラの解決は、「体」から始めよう
- イライラは、あなたが弱いからではなく、“体の防御反応”
- 相手を変えなくても、自分の反応は変えられる
- 深呼吸・セルフタッチ・リズム運動など、「体から整えるケア」は効果抜群
- 書く・離れる・断る。小さな選択が、自分を守る第一歩になる
最後に:あなたは、守られていい存在です
もし、誰かに振り回されて疲れていたら。
もし、自分の感情がわからなくなっていたら。
それは、あなたがずっと「がんばってきた」証拠です。
体と心は、いつもつながっています。
優しいあなたの神経を、今日から少しだけ、“自分のために”整えてみませんか?
参考文献
- ポージェス, S. (2011). The Polyvagal Theory: Neurophysiological Foundations of Emotions, Attachment, Communication, and Self-Regulation. W. W. Norton & Company.
- 加藤, 俊徳. 「脳を最適化すれば能力は2倍になる」(2015年). サンマーク出版.
- 厚生労働省. 職場におけるメンタルヘルス対策
- 日本自律神経学会. https://www.jans.jp/
- Field, T. (2010). Touch for socioemotional and physical well-being: A review. Developmental Review, 30(4), 367–383. https://doi.org/10.1016/j.dr.2011.01.001
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