
「座りっぱなしって体に悪いんでしょ?」
「立って仕事するといいって聞いたことある」
ここ数年、そんな話を耳にする機会が増えました。
だけど実際は…座ってばかりの毎日。
パソコンに向かってると、時間はあっという間。
気づいたら今日も、何時間も同じ姿勢。
なんとなく首や肩がこって、なんとなく疲れがとれない。
私はそんな人たちを、理学療法士としてたくさん見てきました。
そしてこう思うんです。
**「それ、なんとなくの疲れじゃなくて、“ちゃんと理由のある疲れ”かもしれませんよ」**って。
座りっぱなしの体には、何が起こっているの?
長時間座っていると、体の中ではさまざまな変化が起こっています。
たとえば…
- **腸腰筋(大腰筋+腸骨筋)**が短縮し、骨盤が後傾しやすくなる
- 骨盤が後傾すると、頭部が前方へずれる
- それを支えるために僧帽筋上部・肩甲挙筋が緊張し、首こり・肩こりに
- 下肢ではふくらはぎ(下腿三頭筋)の筋ポンプ作用が低下し、
血流が滞りやすく、むくみ・冷えの原因にも
これが、「なんとなくだるい」「足が重い」「夕方になると腰が重い」の正体かもしれません。
さらに最近の研究では、長時間座っていること(専門的には「座位行動=SB」と呼びます)が、以下のような健康リスクを高めることがわかっています:
●心臓病による死亡リスク:1.18倍
●がん死亡リスク:1.17倍
●糖尿病リスク:1.91倍
●全体の死亡リスク:1.24倍
たとえば、50歳以上の女性を12年間追跡した調査では、1日8時間以上座っていた人のがん死亡リスクが1日4時間未満の人に比べて1.21倍高かったという結果も。
では、立ったら本当に変わるの?
実際に、日本のデスクワーカー74名を対象とした研究では、座り立ちデスクを3ヶ月間使ってもらったところ…
- 座っている時間が有意に減少(p = 0.002)
- 首・肩の痛みの軽減(p = 0.001)
- 「仕事に対する活力」や「パフォーマンス」の自己評価が改善(p < 0.001)
という結果が出ています。
ちなみに理学療法士の私の経験上、スタンディングデスクを導入した方の多くが「夕方のだるさが減った」「肩がラク」と感じることも多いです。
特に猫背・反り腰・腰痛を感じている人には効果が出やすい印象です。
もちろん、スタンディングデスクを使えばすべてが劇的に変わるわけではありません。
体脂肪率や腰痛そのものには大きな変化はなかったという報告もあります。
それでも、**「体がちょっとラク」「気分が前向きになった」**という小さな変化は、忙しい毎日には大事な“改善”です。
「立ちっぱなし」じゃなくて「ときどき、立つ」
「じゃあ、これからずっと立って仕事しないといけないの?」
…そんなことはありません。
むしろ、立ちっぱなしの作業はふくらはぎや腰への負担が増え、逆効果になることも。
大切なのは「ときどき、立つこと」。
理学療法の視点からおすすめする『ときどき立つコツ』はこちら:
🔍 今日からできる!ときどき立つ3つの工夫
- 電話は立って取るルール
- →「もしもし」を言うときだけでも立つ。1回30秒でもOK。
- 昼食後は10分だけ“立ちスマホ”
- →座ってだらだら→立ってチェックで習慣化。
- 飲み物・おやつは“立ってキッチン”で補給
- →ペットボトル・マグカップはわざと遠くに置く。
これだけでも、1日15〜30分の“座り時間”短縮が目指せます。
💡 さらにワンポイント
「1時間に1回、2分立つだけ」で血流改善効果があるという報告もあります
(Dempsey et al., 2020)。
まずは“タイマーを1時間ごとにセット”してみては?
ときどき、リハ。
私がこのブログで伝えたいのは、
**“特別な人だけがやる健康法”じゃなくて、“がんばりすぎなくてもできる、小さな見直し”**です。
「毎日立って仕事しなきゃ」じゃなくていい。
「今日はちょっと立ってみようかな」くらいで、じゅうぶん。
座りっぱなしの世界に、ちょっとだけ風を通す。
その“ときどき”が、あなたの体と心にとっての“リハビリ”になるかもしれません。
📌 今日のまとめ
●「座りっぱなし」は、疲れや不調の原因かも
● 完璧じゃなくていい。「ときどき立つ」が大切
●まずは1日1回、5分だけ“立って”みよう
● 電話・昼休み・飲み物…小さな立ち時間を意識しよう
● それが“体”と“心”と“仕事”の小さなリハビリに
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