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筋肉痛は悪いもの??多くの人が勘違いしている“筋肉痛の真実”

その他

「先生、筋肉痛になるのがイヤなんです…」
リハビリの現場で、よくこんな声を聞きます。
特に、運動に苦手意識がある方や、高齢の患者さんほどそう。

でも、実は筋肉痛=悪いものというのは、よくある誤解なんです。
むしろ、**体がちゃんと反応してる証拠**とも言えます。

今回は、そんな「筋肉痛」のホントのところ、そして**“良い筋肉痛と悪い筋肉痛の違い”**について、リハビリの現場からお届けします。

筋肉痛って、そもそもなに?

筋肉痛には大きく分けて2種類あります。

  • 運動中や直後に起こる「急性筋肉痛
  • 運動後1〜2日してから起こる「遅発性筋痛(DOMS:Delayed Onset Muscle Soreness)

私たちがよく「筋肉痛」と呼んでいるのは、後者の「遅発性筋痛」です。

これは、筋肉の微細な損傷によって炎症が起き、その修復過程で痛みや違和感が出る自然な反応。
筋トレや慣れない動き、特に“筋肉を伸ばしながら力を出す”運動(伸張性収縮)で起こりやすいのが特徴です。

筋肉痛がある=いい運動をした証拠?

よく言われるのがこのフレーズ。

「筋肉痛があるってことは、効果があったんだよね?」
「筋肉痛がないと筋肉は育たないんじゃないの?」
「やっぱり次の日に痛くならないと、意味ないよね?」

半分、正解。半分、誤解です。

✅効果があった“可能性”は高い

筋肉痛は、筋繊維の損傷が起きている証拠なので、
今まで使っていなかった筋肉を動かした」という意味では前向きなサイン。

❌筋肉痛がなければダメ、は間違い

逆に言えば、筋肉痛がないと効果がないと思ってしまうのはNGです。
体が慣れてきたり、負荷が適切だったりすると、筋肉痛は出にくくなります。

筋肉痛と筋肥大の関係、ホントのところ

実際は、筋肉痛がある=筋肥大するとは限りません。

✅ 筋肉が大きくなる仕組みは3つ

筋肥大(筋肉の成長)は、主に以下の3つの要因で起こるとされています。

要因内容
メカニカルストレス重りを持ち上げるなど、筋肉に強い張力がかかること
筋損傷筋繊維が微細に傷つく(=筋肉痛の一因)
代謝ストレス乳酸や代謝産物が蓄積し、パンプ感が起きる状態

このうち「筋損傷」には筋肉痛が関係しますが、筋肉痛がなくても他の要因で筋肥大は起こります。

🔍 実際、筋肉痛がないトレーニングでも成長する

トレーニングを継続していくと、同じ負荷では筋肉痛が出にくくなるのが普通です。
でも、それは体が適応してきた証拠。
実際、多くのアスリートやボディビルダーは「筋肉痛なしでもしっかり成長」しています。

「筋肉痛の有無と筋肥大の度合いに明確な相関はない」
(Schoenfeld BJ, 2010)


✅ 筋肉痛は“成長の合図”のひとつ。でも、それだけじゃない

筋肉痛がある→ 今まで使っていなかった部位が反応している証拠。
筋肉痛がない→ 体がその運動に慣れてきたサイン。効果がないとは限らない。

筋肉痛が怖い理由。心理的ハードルの正体

多くの人が筋肉痛を「悪いもの」と感じてしまうのには理由があります。

  • 痛み=ケガのイメージ
  • 翌日の生活に支障が出る
  • 運動に対するマイナスの記憶(部活の辛さなど)
  • 高齢になると「無理して大丈夫?」という不安

特にリハビリでは、「日常生活動作のためのトレーニング」を目的としているため、
無理をさせることに敏感な患者さんも多いのです。

だからこそ、理学療法士としては、筋肉痛が「悪いサイン」ではないことを丁寧に説明し、「体に起こっていることを可視化」してあげることが大切です。


「良い筋肉痛」と「悪い筋肉痛」の違い

比較項目良い筋肉痛悪い筋肉痛
発生タイミング運動後12〜48時間以内運動直後、または数日以上続く
部位筋肉の広い範囲関節周囲・腱・特定の1点に集中
痛みの性質鈍痛・張り感・筋肉を使ったときに感じる鋭い痛み・刺すような痛み・動かすと増悪
改善傾向数日で自然に消失1週間以上続く/悪化していく
伴う症状筋肉の疲労感・使用感しびれ・関節の腫れ・熱感など

悪い筋肉痛は「炎症や損傷のサイン」のこともあるため、
痛みが鋭い、長引く、関節が痛い、という場合は注意が必要です。


筋肉痛があるとき、運動していいの?

✔ 軽い筋肉痛 → 運動OK!

ウォーキング、ストレッチ、ゆるめの筋トレなどで「血流を促す」と、回復が早まります。

❌ 強い痛みや違和感がある → 休むべし

痛みが強くて動作に支障があるときは、無理せず休養を。
超回復を狙うなら、48〜72時間は空けて同じ部位を鍛えるのが理想です。


筋肉痛を和らげるには?

🔹 運動後すぐのストレッチ

→ ゆっくりとした静的ストレッチが効果的

🔹 軽い運動(アクティブリカバリー)

→ 翌日の散歩やヨガで血流促進

🔹 栄養補給(特にたんぱく質)

→ 筋肉の修復にはアミノ酸が必須

🔹 睡眠

→ 成長ホルモンが分泌され、修復が進みます

🔹 入浴・温熱療法

→ 冷やすより「温めて緩める」が有効なことも


リハビリにおける“筋肉痛との向き合い方”

患者さんの反応はさまざまです。

  • 「久しぶりに筋肉使った感じでうれしい!」
  • 「筋肉痛になったけど、やる気出てきた!」
  • 「翌日動くのがつらかったから、もうやりたくない…」

大切なのは、患者さんに「なぜ起きて、どう対処すればいいか」を伝えること。
そうすることで、不安を減らし、「動くこと=前向きな体験」に変えていけます。


筋肉痛が出やすい運動・出にくい運動

出やすい(伸張性収縮メイン)

  • スクワット(特にしゃがむ動作)
  • 登り坂ウォーキング
  • ダンベルを下ろす動作

出にくい(等尺性・軽負荷)

  • プランク
  • ブリッジ
  • イス座りの膝伸ばし運動など

リハビリでは、筋肉痛が出すぎない程度に少しずつ負荷をかけていくことがポイントです。


「筋肉痛になりにくいカラダ」も実は成長の証

トレーニングを続けていくと、筋肉痛が出にくくなることがあります。
「え?効いてないのでは?」と不安になる人もいますが、
それは「体がその負荷に適応してきた」というサインでもあります。

この場合は、少しだけ負荷や回数を変えてみる、部位を変えることで効果を高められます。

まとめ:筋肉痛は“敵”じゃない。うまく付き合おう

筋肉痛は、あなたの体が“変わろうとしている”証拠。

ただ痛いからといって避けるのではなく、
「これは必要な刺激だったんだ」と前向きに捉えてみてください。

リハビリでも、筋トレでも、日常生活でも——
大切なのは“続けられること”と“安全に取り組むこと”。

「筋肉痛があった」「体が重かった」そんな日こそ、
あなたの努力が体にちゃんと届いている証かもしれません。

参考文献

  1. Cheung K, Hume P, Maxwell L. Delayed onset muscle soreness: treatment strategies and performance factors. Sports Med. 2003;33(2):145–164.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12617692/
  2. Nosaka K, Newton M. Muscle damage and soreness after endurance exercise of the elbow flexors. Med Sci Sports Exerc. 1996;28(8):953–961.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8871905/
  3. 日本整形外科学会雑誌. 筋損傷に関する最近の知見. 2020年;70(3):273–278.
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishiseisai/70/3/70_273/_pdf

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