はじめに|「深呼吸がしにくい」と感じたこと、ありませんか?
「最近なんだか息がしにくい…」
「胸いっぱい吸ってるつもりなのに、呼吸が浅い感じがする」
そんなとき、肺や心臓だけでなく “お腹”や“腰”まわりの筋肉の硬さ が関係していること、知っていますか?
実は、腹筋や横隔膜、肋骨まわりの筋肉の硬さが、呼吸のしやすさに大きく関係しているんです。
この記事では、
✅ 呼吸と腹筋の深いつながり
✅ 腹式呼吸と胸式呼吸の違い
✅ 呼吸が楽になるためのストレッチ・トレーニング
を、理学療法士の視点からわかりやすく解説していきます。
呼吸と腹筋のつながり
キーワードは「腹圧」と「横隔膜」
呼吸というと「肺で空気を吸って吐くだけ」と思いがちですが、
その周りではたくさんの筋肉たちが協力しながら働いています。
特に大事なのが「腹筋」と「横隔膜(おうかくまく)」。
🔽 息を吸うとき
- 横隔膜がグッと下に下がり、胸郭(肋骨のカゴ)が広がる
- 腹腔(お腹の空間)が押し広げられ、腹筋は「伸びる」方向に動く
🔼 息を吐くとき
- 横隔膜は緩んで上へ戻る
- 腹筋(腹直筋・腹斜筋・腹横筋)が「縮む」ことで腹圧が上がり、空気を押し出す
つまり、呼吸のたびに「腹筋⇆横隔膜」がバランスよく動くことで、
呼吸が深く、効率的になるんです。
腹筋が硬いと、なぜ呼吸しにくくなるの?
✅ 腹式呼吸でお腹がふくらまない
腹筋が硬直していると、息を吸ってもお腹が広がりにくくなります。
これでは 腹式呼吸が使えず、呼吸が浅く なってしまうことに。
✅ 肋骨・横隔膜の動きが制限される
腹筋が硬いと、肋骨の動きも制限されやすく、
横隔膜がしっかり下がらずに 胸だけの浅い呼吸=胸式呼吸 に頼るようになります。
✅ 疲労や緊張で悪循環に…
腹筋の疲労やストレスでの緊張は、呼吸をさらに浅くし、
呼吸のしにくさ → 緊張 → もっと呼吸がしにくい…という悪循環に。
腹筋は“呼気”の主役
呼吸のうち「息を吐く動き」に強く関わるのが、実は腹筋です。
呼気での腹筋の働き
- 腹直筋や腹斜筋、腹横筋が収縮して腹圧UP
- 横隔膜を押し上げて空気を吐き出す
- 咳・くしゃみ・声を出すときにも活躍
とくに 運動時や呼吸困難時、疾患があるとき は腹筋の働きが重要で、
効率の良い呼吸のためには、腹筋の柔軟性と筋力の両方が求められます。
呼吸を支える「体幹のコルセット」
呼吸と姿勢はチームで動く!
呼吸時、体幹を支える以下の筋肉たちが連動します👇
筋肉 | 主な働き |
---|---|
横隔膜 | 吸気で下がり、腹腔を広げる |
腹筋群(腹直筋・腹斜筋・腹横筋) | 呼気で腹圧を高める |
背筋(多裂筋など) | 姿勢の安定と呼吸補助 |
骨盤底筋群 | 腹圧を下から支える |
このように「腹圧」は、上下前後左右の筋肉がコルセットのように囲んで支えています。
どれか1つでも働きが悪くなると、姿勢の崩れや呼吸の質の低下につながってしまうのです。
呼吸が浅くなるリスクとは?
- 酸素不足による集中力・判断力の低下
- 自律神経の乱れや不眠、頭痛
- 呼吸補助筋(首や肩)の使いすぎで肩こり・首こり
- 体幹の不安定 → 姿勢が崩れて腰痛リスクUP
呼吸は命に直結するだけでなく、日常の体調や疲労感にも大きく影響しています。
だからこそ、“正しい呼吸”を身につけておきたいんです。
呼吸を整えるエクササイズ&ストレッチ
それでは実際に、呼吸をラクにするための方法をご紹介👇
自宅でできる簡単なものを厳選しました!
🧘♀️ 基本の腹式呼吸
- 鼻からゆっくり吸って、お腹がふくらむのを感じる(3秒)
- 口をすぼめて、ゆっくり吐く(6秒)
→ お腹がへこむのを意識!
🛌 寝たまま呼吸筋ストレッチ(骨盤サポート呼吸)

- 仰向けに寝て、膝を立てる
- お尻の下に丸めたバスタオルを敷く
- 胸とお腹がゆっくり上下するように呼吸
▶︎ 骨盤の傾きが整い、横隔膜が動きやすくなります!
📚 腹部加重呼吸
- 仰向けになり、お腹の上に本を1〜2冊置く
- 鼻から吸って、お腹で本を持ち上げる
- ゆっくり吐きながらお腹をへこませる
▶︎ 横隔膜や腹筋の筋トレにもなり、姿勢改善にも◎
🎐 ブローイング訓練
ストローを使って、ゆっくりと長く「ふーっ」と吐く練習。
肺活量の向上・気分のリフレッシュにも効果的。
毎日の「呼吸習慣」に取り入れるコツ
- 朝・寝る前など“習慣化しやすい時間帯”を決めて行う
- 姿勢を整えてから始める(猫背だと肺が膨らまない)
- やりすぎ注意。疲労や息苦しさが出たら中止を
- 「胸・お腹・背中」の動きがバランスよく連動してるか意識する
おわりに|「お腹をゆるめて、呼吸を楽に」
呼吸の質を高めることは、
集中力・睡眠・姿勢・ストレス…あらゆる面に影響する“健康の土台”です。
お腹がガチガチのまま呼吸していませんか?
深呼吸ができないと感じたら、まずは腹筋や肋骨をゆるめるストレッチから始めてみましょう。
💬ときどき、リハを始めてみませんか?🫁🌿
参考文献
-
山田信行・他. 呼吸リハビリテーションのすべて. 医学書院, 2015.
関連リンク:日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 -
佐藤裕一・他. 「体幹筋」と「呼吸筋」の協調運動に関する研究.
理学療法科学 35巻3号(CiNii) -
Kera T, Kawai H, Hirano H, et al. Relationships among Abdominal Muscle Strength, Diaphragmatic Function, and Respiratory Function in Older Adults.
PubMed – Geriatr Gerontol Int. 2018 -
De Troyer A, Boriek AM. Mechanics of the Respiratory Muscles.
Wiley Online Library – Compr Physiol. 2011 -
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 編. 呼吸ケア・リハビリテーション白書2020. 南江堂.
出版情報:南江堂 書籍ページ
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